タバコとゲーム理論
一年は早いもので・・もう8月も下旬がやって来ました。しかし、今年の夏はコロナに猛暑にと本当に現場の皆さんには辛い時期かと思います。健康と安全を最優先に行きましょう。
と、健康に触れましたが、この会社には意外と愛煙家が多い。私は社内に対してノンポリなので、喫煙の有無に関しては興味はありません。
しかしながら、タバコ会社の宣伝・広告は昔からイメージ戦略を実践しており、以前から興味を持っていました。今回はそれを書きます。
さて、お分かりになりますか? 世界規模に於ける2大タバコ会社です。
左の青枠はブリテッシュ・アメリカンタバコ社の子会社のR.J.レイノルズ社(代表的な商品はキャメル、ラッキーストライクなど)、一方の赤枠はフィリップモリス社(代表商品はマールボロ、ラーク他)です。
今ではすっかりF1でもタバコの広告は見ることが無くなりましたが、過去にはF1のイメージと重ねて喫煙はクールの代名詞でした。
しかしながら、アメリカにおいて喫煙がもたらす健康被害の真実が公になってから、議会、公共保健団体等からの圧力が掛かり、ついに1967年にラジオ、テレビでのタバコのCM放送と同じ分の公共の喫煙害の強調CMの放送の義務化がおこなわれます。
それまでのR.J.レイノルズとフィリップモリスのペイオフマトリックスは上記の表の通りです。最善の結果は自社のみ広告を出し、他社は出さない。これが一番儲かる理論です。しかし、このゲームの場合の支配戦略は「広告を出さざる負えない」なのです。つまり、商社ともに広告を出すことになり、結果として、3番目に良い(下から2番めに悪い)結果となる。これは囚人のジレンマと呼ばれます。
しかし、これらのタバコ会社はゲームの根幹を変えることに成功します。交渉の結果、1970年にタバコ会社は一切のCMを中止しますが、その引き替えに公共での喫煙害の強調CMも全面中止とし、さらに将来、裁判所へおこされるタバコ関連訴訟に対して、タバコメーカーは責任を負わぬものとの条件を勝ち取っています。
タバコ業界はCMがビジネスにもたらす効果より、禁煙キャンペーンがビジネスにもたらす害の方が大きいことを理解していました。それなら、両方を捨てた方が純益になると想定した訳です。
この戦略は見事に当たります。結果、翌年のタバコ各社の状況は広告費マイナス20~30%(コスト減)、業界収益は前年同比30%増となります。
つまり、一切の宣伝・広告なしと言う新しい規制によって、タバコ会社の利得とインセンティブが変化した(つまり、ゲームのルールが変わった)規則を破って広告を出し続けることに必要性が無くなったことになります。
禁煙推進派はタバコのCMが喫煙拡大、助長をしていると考えていましたが、実はそうではなく、タバコ喫煙者の数は既に飽和に近く、大手タバコ会社は巨額の広告費を使い、お互いの顧客を喰い合っていただけだったことが判明します。時すでに遅し・・・
さて、ピンチはチャンスです。
追い込まれていく中で、タバコ会社は禁煙推進派とのゲーム理論で勝利します。その方法はゲームのルールを自分本位に変えることです。世界中で勝っている会社は旧態依然とした他人が決めたゲーム(市場)の中で闘っていてはいません。自分たちでゲームのルールを作るのです。
ゲームのルールは変えられるのです。誰でも。それはあなたでもですよ。
さて、複数回続けてきたゲーム理論は今回で終了です。次回からは少し、統計についてお話しできればと思っています。
ネットからの情報(閲覧日:2020/8/20) R.J.レイノルズ https://cigarettesguide.wordpress.com/2013/04/11/r-j-reynolds-tobacco-company/、https://ja.wikipedia.org/wiki/キャメル_(たばこ)#/media/ファイル:Camel_filtersbox_rjr.JPG、https://ja.wikipedia.org/wiki/ウィンストン_(たばこ)#/media/ファイル:Winston-trash.jpg、https://ja.wikipedia.org/wiki/ラッキーストライク#/media/ファイル:Luckystrike_neu.jpg、フィリップモリス:https://1000logos.net/philip-morris-logo/、https://ja.wikipedia.org/wiki/マールボロ_(たばこ)#/media/ファイル:Marlboro_red_Old_pack.jpg、https://ja.wikipedia.org/wiki/ラーク_(たばこ)#/media/ファイル:LARK_Black_Label.JPG、https://ja.wikipedia.org/wiki/パーラメント_(たぼこ)#/media/ファイル:Parlament_One_cigarettes.jpg
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参考文献:世界の一流企業は「ゲーム理論」で決めている デビッド・マクアダムス ダイヤモンド社