ゲーム理論(クールノー競争とナッシュ均衡)
ゲーム理論について書いていきます。理屈は単純なのですが、その説明がややこしい。でも、ゆっくり区別して見てみると少しずつ分かってきます。
同じ業界の競合であるA社とB社、「相手の行動を予想し、自分の戦略を考える」これがゲーム理論の基本です。
A社もB社も戦略の選択肢として図-1に示す通り、現状維持か増産かの2種類があります。
シナリオ1:A社が現状維持し、B社も現状維持です。この場合の売上は仲良く15億円づつです。
シナリオ2:A社は現状維持ですが、B社は増産を行います。この場合、A社の売上は15億円のままですが、B社の売上は25億円と大幅に上昇します。
シナリオ3:シナリオ2の逆パターンです。A社は増産を行い25億円に伸ばしますが、B社は現状維持のために15億円のままです。
シナリオ4:両社共に増産を断行します。供給過剰となり、値崩れが起こり、お互いが25億円づつの売りではなく、17億円となってしまいます。
さて、あなたが、A社の経営企画部門の担当者なら増産?現状維持?どちらの戦略を選びますか???
これがゲーム理論の入門の基本形です。
このゲームの場合は、生産量の増産あるいは現状維持を考え、また、相手企業の戦略は分からない状況です。この条件での競争を「クールノー競争」と言います。
図-1は利得表(ペイオフマトリックス)と呼ばれます。
もうひとつの経済学上の条件として、「企業は合理的な意思決定を行う」と言う条件があります。(「自社を倒産させ、相手も巻き添え」と言う選択はありません。あくまで自社の利を上げることが合理的な意思決定です。)
このペイオフマトリックスでA社が取る戦略は増産以外にありません。何故なら、もしもB社が現状維持を選んだ場合、A社の売上は最高になりますし、仮に両方とも増産しても現状の15億円より2億円アップした17億円になるからです。
このB社の戦略に関係なく、A社は増産しか選択肢がない状態のことを支配戦略と呼びます。つまり、A社の支配戦略は増産であるということです。
さて、次は逆にB社の担当者の立場で考えましょう。そうです。その場合でもA社の全くの裏返しです。相手を読む限り、B社の支配戦略も増産以外ありません。
結果、両社共に増産を行うことになり、市場価格は値崩れを起こします。自らが望む最高の結果にはならないので、これは「囚人のジレンマ」と呼ばれます。
また、相手がどうあろうと両方とも増産に走り、シナリオ4にはまり込む訳ですから、このシナリオ4の状態を「ナッシュ均衡」と言います。
一般的な教科書では売上ではなく、利得(りとく)との表現が多いのですが、分かり易くするために売上としました。
この例は最も簡単な例です。なぜなら、競合の2社が全く同じサイズと売上の会社だからです。でも、世の中そうは簡単に行きません。通常はA社とB社は規模も基本的な売上も異なります。そうなるとシナリオ1~4も大きく異なります。
その非対称企業間のゲーム理論を次回は解説したいと思います。
(出展:世界標準の経営理論 入山章栄著 ダイヤモンド社)