ゲーム理論(クールノー競争とナッシュ均衡)

2020.06.23

ゲーム理論について書いていきます。理屈は単純なのですが、その説明がややこしい。でも、ゆっくり区別して見てみると少しずつ分かってきます。

同じ業界の競合であるA社とB社、「相手の行動を予想し、自分の戦略を考える」これがゲーム理論の基本です。

図-1

A社もB社も戦略の選択肢として図-1に示す通り、現状維持か増産かの2種類があります。

シナリオ1:A社が現状維持し、B社も現状維持です。この場合の売上は仲良く15億円づつです。

シナリオ2:A社は現状維持ですが、B社は増産を行います。この場合、A社の売上は15億円のままですが、B社の売上は25億円と大幅に上昇します。

シナリオ3:シナリオ2の逆パターンです。A社は増産を行い25億円に伸ばしますが、B社は現状維持のために15億円のままです。

シナリオ4:両社共に増産を断行します。供給過剰となり、値崩れが起こり、お互いが25億円づつの売りではなく、17億円となってしまいます。

さて、あなたが、A社の経営企画部門の担当者なら増産?現状維持?どちらの戦略を選びますか??? 

これがゲーム理論の入門の基本形です。

このゲームの場合は、生産量の増産あるいは現状維持を考え、また、相手企業の戦略は分からない状況です。この条件での競争を「クールノー競争」と言います。

図-1は利得表(ペイオフマトリックス)と呼ばれます。

もうひとつの経済学上の条件として、「企業は合理的な意思決定を行う」と言う条件があります。(「自社を倒産させ、相手も巻き添え」と言う選択はありません。あくまで自社の利を上げることが合理的な意思決定です。)

このペイオフマトリックスでA社が取る戦略は増産以外にありません。何故なら、もしもB社が現状維持を選んだ場合、A社の売上は最高になりますし、仮に両方とも増産しても現状の15億円より2億円アップした17億円になるからです。

このB社の戦略に関係なく、A社は増産しか選択肢がない状態のことを支配戦略と呼びます。つまり、A社の支配戦略は増産であるということです。

さて、次は逆にB社の担当者の立場で考えましょう。そうです。その場合でもA社の全くの裏返しです。相手を読む限り、B社の支配戦略も増産以外ありません。

結果、両社共に増産を行うことになり、市場価格は値崩れを起こします自らが望む最高の結果にはならないので、これは「囚人のジレンマ」と呼ばれます。

また、相手がどうあろうと両方とも増産に走り、シナリオ4にはまり込む訳ですから、このシナリオ4の状態を「ナッシュ均衡」と言います。

一般的な教科書では売上ではなく、利得(りとく)との表現が多いのですが、分かり易くするために売上としました。

この例は最も簡単な例です。なぜなら、競合の2社が全く同じサイズと売上の会社だからです。でも、世の中そうは簡単に行きません。通常はA社とB社は規模も基本的な売上も異なります。そうなるとシナリオ1~4も大きく異なります。

その非対称企業間のゲーム理論を次回は解説したいと思います。

(出展:世界標準の経営理論 入山章栄著 ダイヤモンド社)

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